活発で寿命も長めのトイプードルですが、かかりやすい病気がいくつかあります。
小型犬に多い骨や関節の病気をはじめ、目の病気や皮膚の病気にも比較的かかりやすいです。
また、心臓や内分泌系の病気にかかる子もいます。
この記事では、トイプードルがなりやすい病気一覧と、治療費の目安、予防のためにできることなどをご紹介していきます。
トイプードルに多い12の病気一覧
カテゴリ | 病名 | 危険度 | 治療費の目安 |
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目の病気 | 白内障 | 手術:20~25万円 | |
緑内障 | 手術:8万~15万円 | ||
進行性網膜萎縮症(PRA) | サプリ代:月3,000円~ | ||
流涙症・涙やけ | 投薬:月5,000円~ | ||
皮膚の病気 | アトピー性皮膚炎 | 投薬:月3,000円~ | |
脂漏性皮膚炎 | 投薬:月3,000円~ | ||
骨・関節の病気 | 膝蓋骨脱臼(パテラ) | 手術:20万~30万 | |
大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス) | 手術:15万~30万 | ||
その他の病気 | 外耳炎 | 投薬:月1,000円~ | |
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群) | 投薬:月15,000円~ | ||
フォンウィルブランド病 | - | ||
僧帽弁閉鎖不全症 | 手術:150万円~ |
トイプードルが比較的かかりやすい病気を一覧にしてみました。
先天的な体質からかかるものもあれば、生活習慣や老化によってかかるものもあります。
それぞれの病気について、くわしく見ていきましょう。
トイプードルがかかりやすい4つの目の病気
トイプードルは目の病気にかかりやすい犬種です。
中でも多いものを取り上げていきます。
①白内障
症状 |
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治療費の目安 | 手術:20~25万円(片眼) |
予防法 |
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白内障とは、目のレンズにあたる水晶体が白く濁って視力が低下する病気です。進行すると、失明するおそれがあります。
犬の白内障は、人間と違って遺伝による若年での発症が多く、6歳未満でかかる子が多い点が特徴です。
特に糖尿病になると、ほぼ確実に罹患してしまいます。
また、若年性の白内障は早く進行しやすいです。
症状が見られた時には、すでに進行していることが多いため、1歳を過ぎたころから年に1度、定期的に検診を受けることをおすすめします。
白内障の治療は、進行を遅らせるための点眼薬が中心です。
人工レンズを入れる手術もありますが、視力回復の見込みがない場合は適応になりませんし、行なえたとしても合併症のリスクがあります。
少しでも進行をゆるやかにするためにも、早期発見・早期治療開始が大切です。
また、後天的な原因として紫外線や外傷などがありますので、予防のために「直射日光の下に長時間いさせない」「目のケガに気をつける」なども意識しましょう。
②緑内障
症状 |
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治療費の目安 |
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予防法 | なし |
緑内障は、眼球内の「房水」がうまく流れなくなることで眼圧が上昇し、眼球の内側から強い圧力がかかる病気です。
人間と同様、加齢とともにかかりやすくなります。予防法は、基本的にありません。
白内障とは違い、強い痛みをともなうほか、食欲低下や嘔吐などの症状も引き起こします。
進行すると視覚が失われてしまうため、やはり定期検診による早期発見が重要です。
緑内障にかかったら、目薬・内服薬・注射などの眼圧を下げる治療を行ないます。
すでに視力を失ってしまった場合は、眼球を摘出する手術や義眼を入れる手術を行なうこともあります。
また、最近はレーザーで眼圧を下げる治療法も普及してきました。
③進行性網膜萎縮症(PRA)
症状 |
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治療費の目安 | サプリ代:月3,000円~ |
予防法 | なし |
進行性網膜萎縮症(PRA)は、プードルに多い遺伝性疾患です。
目の網膜が萎縮して光を感知できなくなり、最終的に失明に至る病気で、遺伝性のため予防法はありません。
ただし、遺伝子検査で発症の可能性があるかどうかを調べることができます。
結果が「ノーマル(クリア)」または「キャリア」であれば、発症の心配はありませんが、「アフェクテッド」の場合は高確率で発症します。
発症時期は6歳前後が多いですが、中には10歳を過ぎてから発症する子もいるようです。
一度発症すると完治は不可能で、進行を遅らせるためのビタミンEやサプリの投与が中心となります。
良心的なブリーダーであれば、PRA因子の検査を行ない、問題のない子犬だけを譲渡していますが、中にはそうではないケースもあるため注意が必要です。
犬が暗い所で物にぶつかったり、全体的に元気をなくしているような場合は、すみやかに病院に連れて行きましょう。
④流涙症・涙やけ
症状 |
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治療費の目安 |
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予防法 |
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流涙症も、プードル種に多い目の病気です。
涙の量が増える、または涙がうまく排出されないために涙があふれてしまう病気で、常に目の周りが涙で濡れるようになります。
毛が茶色に変色する「涙やけ」を起こしていたら、流涙症の可能性が濃厚です。
原因は、アレルギー・結膜炎・角膜炎などのほか、逆さまつげや、生まれつき鼻涙管が狭いなどの遺伝的な体質が関係していることもあります。
いずれにしても、涙やけを放置すると皮膚炎につながるため、早期治療が必要です。
アレルギーの場合、フードを変えただけで改善するケースも多いですが、先天的な異常がある場合は全身麻酔下での鼻涙管洗浄や、外科手術を行なうこともあります。
原因を調べるためにも、まずは動物病院で検査を受けましょう。
トイプードルがかかりやすい2つの皮膚の疾患
毛が長くもつれやすいトイプードルは、皮膚の病気にも要注意です。
特にかかりやすい皮膚疾患について解説します。
①アトピー性皮膚炎
症状 |
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治療費の目安 | 投薬治療:月3,000円~ |
予防法 |
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人間と同じく、犬もアトピー性皮膚炎にかかることがあります。
ダニやハウスダスト、カビ、花粉などのアレルゲンが原因です。
特に、耳や顔、脇の下、指の間、お腹、しっぽの付け根などに好発します。
強いかゆみによって患部を舐めたり噛んだりしてかき壊してしまい、またそれが原因で炎症やかゆみが起きる…という「かゆみサイクル」を繰り返す点が特徴です。
かゆみ止めや炎症止めの薬の服用や、アレルゲンの除去、こまめなシャンプーなどで、まずはかゆみを断ちます。
さらに、保湿剤を使用するなどして皮膚バリア機能を高めることも有効です。
②脂漏性皮膚炎(脂漏症)
症状 |
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治療費の目安 | 投薬治療:月3,000円~ |
予防法 |
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脂漏性皮膚炎は、体質的にトイプードルがアトピー性皮膚炎とセットで発症しやすい皮膚炎です。
その名の通り、脂っぽく皮膚がべたつくのが特徴で、特に春夏に悪化します。
顔・のど・胸・脇・股・しっぽの付け根などに起こりやすいです。
主な原因は「皮膚のターンオーバーの乱れ」で、通常より早い新陳代謝によって皮脂腺の分泌が過剰になることで起きます(背景として、アレルギーやホルモン異常、真菌感染、ステロイド薬の副作用なども考えられます)。
皮膚が脂っぽくなると、それを好むマラセチアという菌が繁殖しやすくなり、皮膚の炎症やかゆみにつながっていきます(マラセチア皮膚炎)。
治療は、内服薬治療と適切なスキンケアが中心です。
また、暑い時期は蒸れないように毛を短くカットしたり、栄養バランスに優れたフードを与えたりすることで一定の予防効果が期待できます。
トイプードルがかかりやすい2つの骨や関節の病気
トイプードルのような小型犬は、骨や関節の病気にかかりやすいです。
特に多い2つの病気について解説します。
①膝蓋骨脱臼(パテラ)
症状 |
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治療費の目安 | 手術:20万~30万(片脚) |
予防法 |
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膝蓋骨脱臼(パテラ)は、後ろ足の膝蓋骨(膝のお皿)が外れてしまう病気です。
先天性が多いですが、転落や打撲などの後天的な原因で起こる場合もあります。
スキップのような歩き方をする、3本足で歩く、つま先立ちをする、などの症状が代表的です。
グレード(1~4)や症状、年齢、性格などを総合的に見た上で、必要であれば外科手術が行なわれます。
予防のためには、できる限り足に負担をかけないことが大切です。
フローリングの床にはカーペットを敷く、適正体重を維持する、階段の上り下りやジャンプはなるべくさせない、などが予防につながります。
②大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス)
症状 |
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治療費の目安 | 手術:15万~30万(片脚) |
予防法 | なし |
大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス)も、小型犬に多い病気で、特に1歳までの成長期に発症しやすいと言われます。
原因は不明ですが、股関節の一部である「大腿骨頭」に血液が十分に行き渡らないことで、骨頭の成長が阻害されたり、壊死したりする病気です。
片側だけに発症する場合と、両側に発症する場合があります。
痛みをともなうため、パテラと同じようにスキップのように歩くなど、歩き方・立ち方に何らかの異常が表れることが多いです。
痛み止めで一時的に症状を緩和することもありますが、基本的には大腿骨頭の切除手術が必要となります。
最近は、人工関節を入れる手術も行なわれるようになりました。
先天性のため予防法はありません。症状を見逃さず、早めに病院につれて行くことが肝心です。
トイプードルがかかりやすい4つのその他の病気
その他、トイプードルに多い病気をいくつかご紹介します。
①外耳炎
症状 |
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治療費の目安 |
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予防法 |
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外耳炎は、耳が垂れている犬種に多い耳の病気です。
特にトイプードルは、耳道に毛が生えているため、非常に蒸れやすい構造をしています。
その結果、細菌や真菌、寄生虫などによって炎症を起こした状態が外耳炎です。
特に夏場、耳をかゆがる様子がある、耳から悪臭がする、色の付いた耳垢が増える、などの症状が見られる場合は、高確率で外耳炎が疑われます。
治療は、耳の洗浄と点耳薬が中心です。
予防のためには耳を清潔に保つことが大切ですが、たとえば耳毛抜きや、綿棒を使った耳掃除などは、逆に耳を傷つけることで外耳炎を引き起こすことがあります。
最近は、ムリな耳毛抜きは推奨されず、耳周りの毛を短めにカットするだけで十分という風潮になってきているようです。
耳はデリケートな部位ですので、できれば信頼できるトリミングサロンや動物病院でケアしてもらうことをおすすめします。
②副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
症状 |
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治療費の目安 |
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予防法 | なし |
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、副腎皮質から分泌される「コルチゾール」というホルモンが過剰分泌されることで起こる病気です。
脳下垂体または副腎にできる腫瘍が原因で、特に8歳以降にかかりやすいと言われます。
特別多い病気ではありませんが、プードルは比較的かかりやすい方です。
水をたくさん飲む、尿量が増えるなどの糖尿病に似た症状のほか、毛が抜ける、お腹が膨らんでくる、呼吸が速くなる、足腰が弱くなって散歩を嫌がるようになる、などさまざまな症状が表れます。
神経症状による夜鳴きや徘徊などもありますが、どれも老化現象と間違われやすい点に注意です。
治療は、副腎にできた腫瘍が原因の場合は手術になりますが、脳下垂体にできた腫瘍の場合は内服薬や放射線による治療が中心となります。
予防法は、残念ながらありません。愛犬に少しでも異常が見られたら、病院で検査を受けることが大切です。
③フォンウィルブランド病
症状 |
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治療費の目安 | - |
予防法 | なし |
フォンウィルブランド病は、止血機能に関する「フォンウィルブランド因子」が遺伝的に欠乏する病気です。
細かく3つのタイプに分かれますが、いずれにも共通する症状として「出血しやすい」「ケガをした時に血が止まりにくい」などがあります。
特にプードルは、軽度~中等度の止血異常が起こる「タイプ1」が多いと言われています。
遺伝性のため、根治する治療法は残念ながらなく、過剰出血が起きた時に輸血をする対症療法が中心です。
ただし、プードルに多い「タイプ1」の場合、手術などの出血が予想される前に「酢酸デスモプレシン」というホルモン剤を点鼻すると、一時的に出血が止まりやすくなります。
日常生活ではなかなか発見しにくい病気ですが、身に覚えのない皮下出血や血尿などを認めたら、すみやかに受診しましょう。
④僧帽弁閉鎖不全症
症状 |
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治療費の目安 |
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予防法 | なし |
僧帽弁閉鎖不全症は、小型犬にもっとも多い心臓病です。特に高齢犬によく見られます。
「僧房弁」とは、左心室と左心房の間にある弁で、血液の逆流を防ぐ役割があるものです。
この弁が、加齢によってうまく閉じなくなることで、血液の一部が逆流してしまい、全身にうまく血液が送り出せなくなります。
初期のころは大きな問題がなくても、やがて心臓が限界を迎えてしまい、心不全を引き起こします。
初期症状が少ないため、定期検診で早期発見したい病気です。
進行すると、血液で膨らんだ左心房によって気管支が圧迫され、痰の絡んだような咳が出るようになります。
さらに進行すると、肺水腫となって呼吸が苦しくなったり、舌が紫になる「チアノーゼ」を起こしたりするほか、不整脈で突然死することもあります。
治療は、病気の進行をゆるやかにするための投薬治療が中心です。
ごく一部の高度な設備のある病院では、人工弁を入れる手術も行なわれていますが、手術の難易度が高く、費用も高額であることから、まだ一般的な治療とは言えません。
まとめ
✔遺伝性の病気は、基本的に予防できない
✔早期発見のためにも、年に1度は健康診断を受けよう
トイプードルのかかりやすい病気をいくつかご紹介しました。
体質的にかかりやすいのは、皮膚病や外耳炎、膝蓋骨脱臼(パテラ)などです。
骨折もしやすいため、転落には十分に注意しましょう。小さなトイプードルは、ソファから落ちただけで骨折することもあります。
生活習慣の見直しなどで予防できる病気もありますが、先天的な病気は基本的に予防が難しいです。
ただし、早期発見することで健康を長く保てる可能性がありますので、たとえ症状が何もない時でも、年に1度は健康診断を受けることをおすすめします。